寒かった冬もようやく終わり、日に日に春めいてまいりました。
今年は桜の開花がいつもにまして待ち遠しいですね。
第5回でお話いたしましたが、桜の時期にはコート、羽織を脱いで
帯付きの装いとなります。
帯の美しさを楽しむ季節を迎え、第9回は基本的な帯のお話をいたしましょう。
帯は大きく分けて
丸帯、袋帯、なごや帯、半幅帯、角帯、兵児帯という種類があります。
最も格式の高い帯が丸帯で、ついで袋帯、なごや帯、半幅帯となります。
「丸帯」は幅の広い生地(約70cm)を半分に折って仕立てるので全面に柄があり
厚みがあります。
長さ4m20cmほどです。
どのような結び方でも柄が出るのでたいへん豪華なものです。
しかし結びも難しく、重さもあるため最近は花嫁や芸妓さんがお使いになるくらいで
あまり使われません。
「袋帯」は生地を袋状に織ったのでこの名前がつきましたが、
現代は柄と無地の二枚を縫い合わせる「縫い袋」が一般的です。
幅約30cm長さ4m 20cm 前後です。
表側全面に柄のあるものを「全通」、柄が6割ほどのものを「六通」とよびます。
袋帯は柄ゆきによって礼装から観劇などのお出かけまで様々なシーンで使われます。
結び方も二重太鼓から、振袖や訪問着をより一層華やかにする変わり結びまで
楽しむことができます。
フォーマルにもむく袋帯
粋なしゃれ袋帯
「なごや帯」は一番よく使われる帯でしょう。
大正時代に名古屋で考案されたもので、昭和になって一般的になりました。
種類も多く、九寸織り、九寸染め、袋なごやがあります。
六通柄とお太鼓柄があります。
九寸と袋では仕立て方が異なりますが、長さはともに3m50~60cmくらいです。
・九寸
普通なごや帯と呼ばれるものが、織り・染めの九寸帯です。
お太鼓を30cm 、手先と胴回りの部分を15cm幅に折り、芯を入れて仕立てます。
結んだ時のお太鼓は一重太鼓になります。
セミフォーマルにも使える織りなごや帯
友禅、型、絞り、刺繍などを施したものを染めなごやといいます。
お太鼓と前帯部分にだけ模様のあるお太鼓柄が多いです。
染めの優しさで季節を楽しむなごや帯
・袋なごや
「八寸」、「かがり」ともよばれます。
お太鼓になる部分を裏に折り込んで二重にし縁をかがるだけで仕立てます。
カジュアルで手軽に締められる帯です。
博多帯、つづれ帯も袋なごやに仕立てます。
紬の袋なごや
福岡の博多で生産される博多帯。
代表的な博多献上帯は江戸時代に黒田藩から幕府に献上されたことで
この名がつきました。
右が博多献上 左が紋博多 下が紗献上
京都西陣で生産される綴れ帯は爪掻き本綴れといい、文字どおり櫛の歯のように
削った爪で糸を掻いて織りあげる伝統工芸品。
一日に2cmしか織れないたいへん希少な織物です。
やさしい色の綴れ帯
「半幅帯」
帯の幅(30cm)の半分の幅の帯を半幅帯とよびます。
ひとえ帯と輪になった小袋があります。
以前はゆかたや夏きもの向きでしたが、最近はリバーシブルや緞子・唐織もあります。
紬や小紋にあわせて変わり結びで楽しめるものも出回っています。
「角帯」
男性の帯として最もよく使われてます。
幅10cm長さはまちまちです。
博多織が多いですが、紬、綿、合成繊維のものもあります。
「兵児帯」
男性の街着や普段着、ゆかた用として使われる、総絞りまたは端絞りのものと
幼児用の絞り染めのものがあります。
端絞りの兵児帯
幼児用は晴れ着からゆかたまで使えます。
最近は女性のゆかた用にプリントやオーガンジーの華やかなものもあります。
軽くて結びやすい女性用兵児帯
おしゃれさんはきもの一枚に帯五本と言うくらい
帯はきもの姿を決める大切なポイントです。
織り、染め、柄、素材、格式と様々な帯を選ぶ楽しさに
おきものとの調和も考え合わせますと、
帯のおしゃれは奥が深く、どんどん広がってまいります。
この春は、お気に入りの帯を締めてお花見などに
お出かけされてはいかがでしょう。