今年は初夏からとても暑い日が続きますね。
体調を崩される方も多いようで、早く涼しくなってほしいですね。
8月はお盆月、昨今はめっきり少なくなりましたが、お盆月は喪服をお求めになる方が多い月です。
第16回は、人生の締めくくり 故人を偲び、おごそかに装いたい喪服についてお話をいたしましょう。
喪服といえば黒装束を思い浮かべられる方が多いと思います。
飛鳥時代に仏教が伝わって以来、死者を弔う通夜、葬儀、初七日、四十九日、忌明けという
葬儀法要の形態は現在とあまり変わりません。
しかし 装いは、時代や地域によって違いがあります。
平安時代の人々の葬儀や喪の服装、法要のさまは いろいろな文献に出ています。
喪服はもともと白装束でした。
文献に残る平安貴族の葬儀の様子を見ますと、親族や伴人は白麻の衣服を着けていたとされています。
葬儀の後、四十九日間は灰色のきものを着て喪に服したようです。
その後、長く葬儀は白装束で行われていたようですが、江戸末期、大久保利通の葬儀に初めて多くの参列者が黒の大礼服を着ました。
以降、男子は黒紋付羽織に黒袴となっていったようです。
この頃は女子はまだ白装束ですが、大正から昭和にかけて 黒を着るようになりました。
古来より白であった喪服が黒に変わったのは やはり西洋の黒喪服の影響があったといえます。
式用の礼服として 男子は黒紋付きを着ていましたので、それがそのまま葬儀に着られるようになりました。
女子の礼服は留袖、振袖とも葬儀の場には華やかすぎます。
それで柄を入れない黒一色のきものになったと思われます。
もう一つの理由として 白絹の生地の特性で経年で黄色く変色する(黄変)のできれいな白を保つことが難しく、黒いきものが好まれたと考えられます。
白装束の葬儀は現在でも残っております。
葬儀の衣装は地方により異なりますが 現在では大きく分けて次の三通りです。
1.白装束の地方
昔からのしきたりを守っている地方です。喪主が白裃をつける所もあります。
2.黒上着に白下重ねの地方
北海道や東北では、重ね着の習慣が残っております。
3.黒装束の地方
式服に重ね着をするのは留袖を思い出していただくと解りよいかと思います。
二枚のきものを重ねて着るのは重くて、着付けにくいものです。
祝儀であっても最近は比翼仕立てが主流です。
また、近代になって重ね着は不幸が重なるとの連想から黒上着のみを着るように
なっていき、東京、大阪をはじめ大都市と関西以西の都市では黒喪服が定着した
ようです。
黒喪服
・白無地地紋綸子の長襦袢
・黒の五つ紋付きもの(関東は黒羽二重、関西は一越縮緬が多く使われています)
・黒共帯(黒なごや帯)
・黒帯締め、黒帯揚げ
・白足袋
・黒ぞうり、黒バッグ
以上が正式な黒喪服の装いです。
葬儀は告別式以外にも通夜や法事があります。
通夜や法事には上記の正式な喪服は避けましょう。
通夜に正式な喪服を着て行くのは失礼にあたります。
通夜や法事には半喪(中喪)の装いとなります。
・白無地紋綸子の長襦袢
・色無地きもの
・黒共帯(なごや帯)
・黒帯締め、黒帯揚げ(白でもよい)
・黒ぞうり、黒バッグ
法事には白共帯(白なごや帯)を使ってもよろしいです。
先ごろ「男の不祝儀きもの」として会葬や弔問に着るきものが発表されました。
男性の第一礼装は五つ紋付のきものに羽織、袴で慶弔両方に用いられるものです。
葬儀、告別式の会葬や通夜に着る場合 喪主でなく参列者であれば 第一礼装である必要はありません。
黒色や紺色など暗色のきものに黒の紋付の羽織というスタイルでの弔問がきもの好きな男性に広がるかもしれませんね。
喪服は、白であれ黒であれ、男性も女性も死後の世界へ旅立つ故人の安らかなることを願い、清楚に正しく美しく装いましょう。