10月も下旬となりようやく秋を感じられるようになってまいりました。
秋は婚礼や七五三などできものをお召しになる機会の増えるの季節ですね。
お子様の成長にそくした大切な儀礼でのきものはフォーマルに正しく装いたいものです。
以前はそれぞれのご家庭の年長者(おばあ様)から娘、孫へと受け継がれていた
伝統の文化が、各家族化や着物離れが進んだ現在では解らずにお困りの方も多いようです。
第2回「七五三」で七五三のお話をいたしましたが、
第17回では、「お子様のきもの」と題し、お誕生からの十三参りまでの行事とその装いについてお話をいたしましょう。
お子様が誕生して初めての行事がお宮参りです。
お宮参りは無事、生を受けたことに感謝し、子供の健康と幸福を祈ります。
お詣りするのは住まいの氏神様です。
日々生活をお守りくださる氏神様に、初めてのご挨拶をするためにお詣りしましょう。
地域により差がありますが 男児は生後31日目、女児は33日目と言われます。
気候やお子様の体調もございますので、お誕生から約1か月と思っておけばよいでしょう。
お宮参りの装いは初着にお祝い着です。男の子はたくましく、女の子は優しく育ってほしいとの祈りを込めた絵柄です。
このお祝い着は母方のご実家からお誕生のお祝いとして贈られることが多いようです。
赤ちゃんには初着(以前は一つ身の着物、現在はベビードレスを着せます)、よだれかけとお帽子(大黒帽とフードがあります)を付けます。


お宮参りの祝い着は赤ちゃんを抱っこする祖母に巻きつけるようにはおります。
でんでん太鼓や末広、張子犬、紐銭と書いた祝儀袋は背中に回った紐に吊るします。

祖母が赤ちゃんを抱く風習は産後のお母様に負担をかけないようにというおばあ様の思いやりから生まれたといわれております。
お母様はおばあ様のお心に感謝し この日は甘えて赤ちゃんをお任せしましょう。
おばあ様にはまだ小さなお孫さまを抱くことは 大変責任の重いことではありますが、
かわいいお孫さまの初めての晴れの日にしっかりとご自身の胸に抱ける喜びを感じていただきたいと思います。

お宮参りは赤ちゃんのお誕生を家族みんなでお祝いし お詣りしましょう。
毎年11月15日に行われる「七五三」は現在でも多くの方がお詣りされているようです。
「七・五・三」は字のとおりそれぞれ七歳・五歳・三歳になった子供の成長を感謝し、幸運を祈願するために神社にお詣りする行事です。
「七・五・三」とよばれるようになったのは江戸時代からのことで この原型は古く平安時代に遡ります。
三歳児の祝いは「髪置き」「髪立ち祝い」と言われ 髪を伸ばし始める儀式
五歳児の祝いは「袴着」「着袴」という 公家文化の 初めて袴を着ける儀式
七歳児の祝いは「帯解き」「紐落とし」と呼ばれる 室町時代からの初めて帯を締める儀式
が受け継がれたものとされています。
現在のように庶民が祝うようになったのは 明治時代以降のことだそうです。
七・五・三のそれぞれの歳にお詣りをしますが、男女の区別があり 男児は三歳と五歳 女児は三歳と七歳にお詣りします。
男児の装いは・・・
三歳児ーお宮参りの際に着た祝い着のお袖を縫い、肩、身丈を身上げして 袴を付けて懐剣、すえひろを持ち 草履をはきます。

五歳児ー五つ紋付きのきものと羽織、袴という大人の礼装と同じ装いです。懐剣、すえひろを持ち 草履をはきます。
女児の装いは・・・
三歳児ーお宮参りの際に着た祝い着のお袖を縫い、肩、身丈を見上げします。 金襴の帯びつけもよいのですが、三歳の場合は重い帯よりも兵児帯に被布コートがお子様も楽に着られ、可愛らしいので選ばれる方が多いようです。

七歳児ー四つ身の晴れ着に金らんの帯、帯揚げ、帯締め、しごき、はこせこ、せんすを付ける伝統を受け継いだ装いです。
七・五・三はお子様の成長を追って記録できる良い機会です。 家族で身なりを整えてお詣りし、お祝いしましょう。
「十三まいり」は 数えで13歳の年に男女がお詣りする行事です。
旧暦3月13日(4月13日)前後に虚空蔵菩薩や各地の神社にお詣りします。
誕生して初めて干支が巡ってくる歳に行います。
生まれてから13歳まで毎年、年替わりで菩薩様にお守りいただき無事成長したことに感謝し、
被護から離れた厄難を払って知恵と健康を授かるよう祈願しましょう。
七五三ほど盛んではありませんが、百年ほど前から始まった習わしです。
十三参りは女児が子供から大人に成長する区切りの行事です。
四つ身のきものを卒業して、初めて大人の仕立てをしたきものを着ます。
肩上げをし、大人物の袋帯を締めます。

明治・大正時代は13歳までは肩身上げをし、十三参りが済んで肩身上げをとりました。
当時、十三参りが済むと大人の仲間入りですね。
特に女子は現在よりも早く大人の女性としての意識を持ったようですね。
十三参り以降は成人式となり本当の大人となります。
お誕生から十三参りまで、日本には子供の成長を祝う伝統の習わしがあります。
わが子を授かった喜びと、この世に生を受けた喜びを親子がそれぞれ感謝し、
絆を深めるために家族そろってお詣りしていただきたいと思います。